Apr 17, 2023

E-Story インタビュー 第3回 ユタカ・タケウチさん(後編)

E-Story インタビュー 第3回 ユタカ・タケウチさん(後編)

「カリフォルニアで働く起業家にインタビュー」シリーズ第三弾、ハリウッド俳優Yutaka Takeuchiさんの後編をお届けいたします。

目次

プライベートはどのように過ごされていますか。

 

ロサンゼルスで生活していると、プライベートとプロフェショナルライフとの境目がいまいちよくわからないんです。だから妻によく「休むのが下手」と言われます(笑)

なのでプライベートを感じたり、休暇を感じられるのは、唯一ロサンゼルスを離れて別の場所にいる時ですかね。特にセコイア国立公園などのナショナルパークは、もうそこに行くだけで僕のマインドをオフにしてくれるので最高です。

でも僕の場合実はロサンゼルスから離れることにも勇気がいるんです。なぜかって、そうすることで何かしらから遅れをとるのではないかとか、重要なオーディションをミスするんじゃないか、と考えたりしてしまうんです。でもそんな事を考えていたらいつまで経っても休みが取れない。だから休むときは「この期間は休む!」と覚悟してプライベートの休みを満喫しています。

スポーツは何かなさっていますか。

日本にいるときは野球から始まり空手、こっちでは柔術をやったり剣術もやったりしましたが、今現在はスポーツというスポーツはやっていないですね。時々キャッチボールぐらいはしたくなります。

ずっと野球をなさっていたのですね。

はい、物心ついた頃からずっとやっていました。家族全員が、僕が野球をやっていることを応援してくれていました。僕が良い成果を出すと家族が喜ぶ。そうなると家族の仲も安定する。そういう事実は自分の中で大きなモチベーションになっていたと思います。ただもちろん当時そんな自覚は全くなく、自分はプロ野球選手になるつもりで続けていました。

父は高校時代に春・夏と甲子園に出場しました。その同じ高校でもう一度甲子園に行き父を超えたかったので、僕も同じ工業高校へ入りました。父の周りには野球関係者が多く、プロに行った人も数多くいたので、今思えば野球に関しては小さい時から英才教育みたいなものを受けていたかもしれません。

高校二年の夏のことです。甲子園の県予選が始まる直前、僕は控えのピッチャーとして三年生のチームにベンチ入りし、練習試合で先発のマウンドに立つ機会をもらいました。その試合中、確か二回の表か裏のことです。ボールを投げた瞬間、「バキッ!」とすごい音がして右上腕の骨が折れてしまいました。疲労骨折です。

入院し、手術を受け、退院後も1年間リハビリをしながら練習を続けました。そして投げ方を変えることでなんとかもう一度マウンドに立つことができました。しかしさすがに以前のような球は投げれませんでした。こうして甲子園出場の夢は叶わぬまま、僕の高校野球人生は終わりました。

しかしその後、僕を欲しいと言ってくれる大学の野球部が現れ、一般推薦でその大学に入学しました。その際、同大学の野球部のマネージャーの方などに受験勉強をかなり手伝ってもらいました。あれがなかったら入れなかったと思うので、今更ですが本当に感謝しています。ところが大学に入学し、野球部の練習に参加し始めて一ヶ月ぐらいたった頃でしょうか。これ、なんか違うなって思ってしまったんです。

このまま続けたら大学四年間を無駄に過ごす、とまで思いました。そしてこの時、自分が目指してたものは、野球が好きでプロ野球選手になることではなく、甲子園でプレイすることだったんだと気づきました。それ以後、野球に対しての情熱は一切無くなってしまいました。とはいえ野球を辞めることはかなり大変でした。なにしろ自分が生きてきた世界そのものを抜け出すような感じでしたから。それでも人生を無駄にしたくない、という思いだけでそれまでの野球人生にピリオドを打ちました。

不思議なことに、腕が折れた瞬間「あ、もうダメだ。野球ができない」と思ったのと同時に「髪の毛が伸ばせる。どういう髪型にしよう」みたいなことも頭をよぎった覚えがあります。ある意味、そこから解放されることに対して、ポジティブなものとネガティブなもの両方の思いが混ざり合っていたんでしょうね。いずれにしても、それら全部があったおかげで今がある。そう考えています。

才能とは「継続できる力」

野球をやっている時は、プレッシャーがたくさんあったようですね。

そうかもしれないですね、自分ではあまりプレッシャーとして捉えていませんでしたが。 

俳優を始めてすぐだったかな。才能について書いてある本を読みました。そこには「才能があるかないかを考えるだけ時間の無駄」と書かれていました。確かにそうだな、と納得しましたね。それで、やはりやってみるしかない、という気になりました。

また、しばらくしてからNHKの「プロフェッショナル」だったと思うんですが、将棋の羽生さんが、才能について話している場面を見た時、彼は「努力し続ける力」みたいなことを言われてて、それも自分の中で腑に落ちましたね。

以前、佐々木朗希さんのインタビューで、マウンドでは一度も緊張したことがないという話を聞いて驚きましたが、ユタカさんは撮影中は緊張されますか。

彼のような素晴らしい才能を持った選手の心情に関して僕が知るところではないですが、自分自身の経験から考えると、若い時はまだあまり失敗や挫折の経験がないので、それほど恐怖というものを感じませんでしたね。

若さという、ある意味無知で無謀だけれど凄まじい勢いのおかげで。でもなんでもそうだと思いますが、長くやっていればいろいろな経験をします。苦い経験もします。そうなると、その嫌な経験の思い出みたいなものはどこかで出てきたりして、もうあんな経験はしたくないなって思ったりすることが、緊張に繋がったりするのかもしれませんね。

僕の場合は、今自分がどういう状態にいるか、その見方次第だと考えています。例えば、「ナーバス」というのは「エキサイト」と捉えることができると思います。また「難しい」というのであれば「挑戦的」と捉えることで自分が前向きになれると思うんです。それプラス、準備に全力で取り組む。準備に全精力を注ぐことで「やれることはやった」と自信を持って撮影現場に行ける。そうすると全てを忘れ、リラックスして現場での経験を楽しむことができるんです。

何度も言いますが僕にとってはやはり準備が全てですね。

今はLAに来るよりもバンクーバーに行った方が、全然可能性は高いかも

ハリウッドでは、人種によって優遇されるとかはありますか。

そういったイメージはあるかもしれませんが、実際のところ、それほど実感はないんです。そうと言えばそうだし、そうでないと言えばそうでないし。

ただこれは実際ハリウッドにいて感じることですが、例えば、アメリカで生まれ育ったJapanese Americanと僕のように日本で生まれ育ったJapaneseは、アジア人の枠では一緒だし、人によっては同じ扱いをする人もいますが、そこにはやはり違う何かがあると思います。どちらが良い悪いではなく、純粋な違いです。僕の英語のアクセントなんかもその最もたる例だと思います。だから僕目線ですが、Japanese Americanが重宝されたイコールJapaneseが重宝されるかっていうと、そういうわけではないと思います。

僕はあくまでもアメリカに住んでるアジアから来た外国人、もっと具体的に言えば日本人という枠の人間です。ただ流れとして、昔だったら、韓国系の人や中国系の人が日本人を演じるということも多々あったのが、最近はかなり少なくなったと思います。日本人の役を探す際、その条件に100% Authentic Japaneseとか書かれていることも増えてきたので。そういう意味では、日本人として重宝される現実がある。それはかなり嬉しく、有難いことです。

テープオーディションがメジャーになってきている現在、ロサンゼルスに住んでいることのアドバンテージはどんどん無くなってきている気がします。以前は、ロサンゼルスで製作されるプロジェクトで日本人を募集する場合、ロサンゼルス近郊に住む日本人の俳優が対象でした。しかしこのテープオーデイションによって、日本人であれば世界中から応募できます。また、そういう募集は日本のキャスティングディレクターにも話が行き、まずは日本でキャスティングする場合も多々あります。

これはとても大きな変化です。もちろんコマーシャルなど、撮影がすぐに行われるようなプロジェクトに関してはロサンゼルス近くで探すことになると思いますが、大作映画だとかテレビシリーズものの重要な役になってくると、日本を始め海外から連れてくるというケースはもう普通になっています。

また、日本に関連あるプロジェクトに関して、もう何年も前からバンクーバーで撮影するケースが増えてきています。最近では、Apple TVでシリーズ化されている「パチンコ」。韓国系アメリカ人の方が書いた本が原作で、在日韓国人の方達の物語です。この作品の撮影ロケーションは九割がカナダであると認識しています。それ以外にも調べてみると日本に関連したいろいろな作品がカナダで製作されているはずです。 

こういう事実を考慮すると、2023年現在、ハリウッド作品に出演したい、と思っている日本人で、どうしても海外へ出たいと思っている方は、ロサンゼルスよりもバンクーバーへ行った方が可能性があるのではないか、と思います。大作に出演する重要な役柄であれば、もちろんロサンゼルスに住む日本人俳優もテープオーデイションで見るんですが、逆にそうでない役に関してはローカルで見つけるケースが圧倒的に増えています。

カナダ現地に住んでいる日本人の方達は着実にクレジットを増やしていると聞きます。出演クレジットを貯めることが目的であれば、ワーキングホリデーもありますし、カナダ、バンクーバーへ行くことは消して悪い選択ではないと思います。

アジア人が活躍した今年のアカデミー賞についてどのような感想を持たれましたか。

素晴らしい事だと思います。少なくとも僕ら海外からやってきたアジア人俳優にとっては、とても嬉しい結果でしたね。

SNSの活用はあまりされていないのですね。

ほとんど使えてないですね。ファンの方が見て喜んでくれるようなものをポストしたい、と思いながらどうしても自撮り系があまり得意ではなくて。Wikipediaでさえもまだ書いていないですし。逆にどう利用したら良いか教えて欲しいです。

どういった層に対して発信したいのか、また利用目的を明確化するのが大切だと思います。例えば、お仕事を採ることが目的であれば、ポストする内容もそれに沿ったもの、またTagも同様ですね。逆にファンを対象にするのであれば、ポスト内容も相当のものになると思います。

英語と日本語だけではなくて、他の言語でも書いてポストしたいなと考えています。対象を日本とアメリカだけに限定したくないので。とはいえ、今は一、二ヶ月に一度ポストしている程度です。

目的がなければ持続しないと思うので、それを決めてから始めると良いかもしれません。

そうですね。今自分で脚本を描きながら進めているプロジェクトがあるんですが、これがより実写化に近付けば、それに合わせてポストする機会が増えてくると思っています。というか増やすつもりでいます。であれば、今あまり焦る必要はないですね。

凄いですね!脚本も書かれているのですね。

自分も出演するつもりで書いています。この方法は多大なる労力がかかりますが、これが僕にとってはSNSの代わりなのかもしれません。

AIについてどう思われますか。

このご時世、もうAIは避けて通れない。そう思って最近ChatGPT3.5を始めました。僕は工業高校で電気科卒なんですが、こういう類の新しいものを始める際、どうしても根本の仕組みまで知ろうしてしまうんです。でもそうすると始めることすらできずに終わることが多くなる。だからそんなことを言っていたらいつまで経ってもAIに触れることができないと思い、今回は何もわからないままChatGPTを始めてみました。ただ正直使っていて、AIの言葉をどこまで信じて良いのか判断するの難しいですね。

ChatGPTは間違った回答をすることもありますので、精査する必要がありますね。Excelの計算式やプログラミングコードなどは正しいようです。

なるほど。やはり鵜呑みにするべきじゃないですね。僕個人的には脚本などを書くのに活用できたら良いなぁ、とか考えています。

ChatGPTを使いこなすには質問力が必要と思います。「10歳の子供にもわかるように説明して欲しい」などとリクエストするのも良いと思います。

是非とも上手く活用できるようになりたいです。ただ僕の場合、ChatGPTでメアドとパスワード入力する時点ですでに躊躇したり、インターネット上での買い物に対してもまだ抵抗があるような人間なので、まずはそこからきちんと慣れていかないと先へ進めないです。

わかります、私もソーシャルログインは使いません。我々もいろんな詐欺に遭いかけました。

携帯のテキストでもスパム増えてますし、リンクをクリックすることだけでも危ない場合があるみたいですし、いろいろ注意しないと怖いですね。

僕自身以前に一度、IRSを装った詐欺に引っかかりそうになったことがあります。マニュアル詐欺でも、口座番号や預金残高、クレジットカードの情報なんかを聞いてきたら間違い無く怪しい。今はそう思うようにしています。

そういえば仕事でも、一度スペインにコマーシャルの撮影で行った時、旅費や滞在費は出ましたがギャラが一切支払われないことがありました。その後コマーシャルは流れていたのですが、ユニオンの仕事ではなかったこともあり、結局泣き寝入りしましたね。

地元に貢献したい

2021年だったと思います。出身地である多治見市で市議会議員をされている方からインスタグラムを通してメッセージを頂きました。そして日本へ一時帰国した際に、その方の紹介で多治見市の市長とお会いして、「多治見市 観光大使」に任命して頂きました。自分がやってきたことを、地元の方々に認識して頂けたことは嬉しかったです。また、観光大使になれたことで、今後故郷に何かしらの恩返しや貢献ができる機会も増えると思うので楽しみにしています。

前回帰国した時、Voice工房という多治見市内で作陶体験ができる場所を紹介して頂き、人生初の茶碗作りを体験しました。なかなか難しかったです。でも楽しかったです。いつかは陶芸家を演じてみたいと思いましたね。

多治見市周辺で作られる「美濃焼」は、日本の台所食器の生産量に関してはかなりの割合を占めています。特にラーメン丼に関しては、2022年の三月−七月にロサンゼルスにあるJapan Houseでも展示されていましたが、九割近くの生産を担っているそうです。とはいえ、そんな街で生まれ育ったにもかかわらず、僕が知っていたことといえば、「志野」や「織部」という名前ぐらいでしょうか。あまりにも身近だったせいか、日本にいる頃はほんとんど目を向けることなく生活していました。

この観光大使就任をきっかけにいろいろ勉強し始めたのですが、この陶磁器の世界、というか美濃焼の世界だけを見てもかなり奥が深いです。個人的には先ほども出た「織部」というスタイルの器。これがなんというか、僕にとってはとても魅力的なんです。もともと左右対称のものが美しいとされていた当時の日本の常識の中で生まれた、左右非対称の織部。何事もきちっ、きちっとした「日本」という土壌で生まれたからこそ、僕には魅力的に見えるのだと思います。

ハリウッドに「Toiro」というお店があります。そこでは三重県伊賀焼の土鍋を中心に日本全国から選りすぐりの食器などを扱っています。そこでもこの織部は扱われいて、お店の方曰くアメリカ人の常連客にも凄い人気だそうです。もしかすると僕が思うのと同じで、日本から来た歪なものって珍しいのかもしれませんね。

理由はなんであれ、故郷で作られたものが注目されていることはやはり嬉しいです。

Yutakaさんのインタビュー記事はここまでです。

前編と後編に分けて、Yutaka Takeuchiさんへのインタビューをご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

ハリウッドという競争の激しい世界で、20年以上にわたり俳優業を続けていること、そしてその傍らで地元への貢献もされていることは、本当に素晴らしいことです。

渡米を考えていらっしゃる方や、起業を目指す方々にとって、今回のインタビュー記事から学べることがあれば、非常に嬉しく思います。


ユタカさんの地元である岐阜県多治見市は、やきもの文化のまちとして、美濃焼とともに発展してきました。ユタカさんは、そんな多治見市の観光大使をされています。

多治見市は、歴史ある窯元や古い町並、荘厳で風格のある古刹や修道院、自然の中に静かに佇む名所・名跡など多くの見どころがたくさんあります。

また、四季折々、様々なイベントが開催されます。ぜひ、多治見市に足を運んでみてください!

たじみ陶器まつり(4月&10月)
http://www.gifukankou.com/event/tajimichawanmatsuri.html

日本3大陶器祭りのひとつである「土岐美濃焼まつり」5月3-5日
https://www.city.toki.lg.jp/kanko/kanko/1004839/1006738.html


Tag